企業・団体
事務系職員のライセンスとして、「医療経営士」の普及と質の向上を期待
事務系職員が自信を持って仕事ができる方法を模索していた
私は共済連での勤務が長く、厚生連には2008年に異動してきました。異動当時の医療機関に対する印象は「ライセンスがモノを言う世界だな」というものでした。医師や看護師、薬剤師などの国家資格者は堂々と意見を述べるのですが、事務系職員は物静かで、黙々と 業務をこなしているようにも見えました。そのころから、事務系職員に医療業界が認めるライセンスを身に付けさせ、自信を持たせる方法はないだろうかと模索を始めました。
当時、プロ野球界では地方に拠点を置く東北楽天ゴールデンイーグルスや北海道日本ハムファイターズが勢いづき始めたころでした。球団運営の手法を調べてみると、病院経営と似ていることに気づきました。優秀なプレイヤーの存在は欠かせませんが、観客に球場まで足を運ばせる仕掛けは、球団スタッフのマネジメントにかかっています。野球にさほど興味のない女性や子どもを呼び込むための仕掛けも多くあると聞いています。病院経営に置き換えると、医師や看護師はプレイヤーで、事務系が仕掛けを考えるべき球団スタッフに当たります。患者を呼び込むための仕掛けや付加価値をどのように作っていくか、事務系職員が重要な役割を担うと感じました。
医療経営士のライセンス自体のレベルアップに期待
事務系職員の多くは、数字には敏感ですが、将来を見越す力はまだまだ弱いと感じています。将来を予見し、マネジメントする力を付けるために、組織での「医療経営士」の学習と資格取得を進めることにしました。私自身、医療経営士テキストで学習したことにより、日本の医療を全般的な視点から理解できたように思います。歴史を見ると、政策誘導によって制 度が変わってきたことがよくわかります。診療報酬の改定に一喜一憂するのではなく、地域医療をどのようにして継続、充実させていくのか、厚生連としての使命を確実に果たしていかなければならないと感じています。
当会では現在、7人が「医療経営士3級」資格を取得しています。今後は、「医療経営士」をキャリアパスの中に位置づけるほか、4年生大学出身女性の管理職登用にも活用していきたいと考えています。
当会の経営陣である役員は、院長理事を除いて、ほとんどが事務系の出身ですから、若手職員には将来、自分たちが役員になるという責任感・使命感を持ってもらいたい。経営面について医師と対等に話せる力をつけるためにも、常に経営の意識を持ってほしいと思いま す。病院は、職種ごとの縦割り意識が強い組織ですが、事務系が間に入ることで横断的なチームを構築する役割を果たし、“人を動かす”という喜びも感じてほしいと思っています。
各医療機関内で「医療経営士」が活躍するためには、ライセンス自体が力を持つことが重要です。協会は資格の普及とともに資格取得後の教育など質の向上を図り、「医療経営士」を医療業界が認めるライセンスに育てていってほしいと願っています。
(山口県厚生農業協同組合連合会代表理事専務)
(「医療経営士」情報誌:「医療経営の理論と実践No.3」掲載)